「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、中小企業等による革新的な新製品・新サービスの開発、新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化などを支援する補助制度です。
「新しい製品やサービスを開発したい」「既存事業とは異なる市場へ進出したい」「海外への輸出を本格化したい」と考えている企業にとって、2026年に特に注目したい補助金の一つです。
第1回公募では、事業目的に合わせて「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つから選択します。
新事業進出枠とグローバル枠では、通常の補助上限額が最大7,000万円、賃上げ特例を適用した場合は最大9,000万円となります。
この記事では、2026年8月26日時点の公式情報をもとに、3つの枠の違い、補助上限額、補助率、対象経費、申請要件、第1回公募スケジュールをわかりやすく解説します。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業等による新たな事業への挑戦を支援する制度です。
支援対象となるのは、大きく分けて次の3つです。
- 技術的革新性のある新製品・新サービスの開発
- 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出
- 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化
制度の目的は、こうした取り組みを通じて企業規模の拡大や付加価値向上を実現し、生産性向上と賃上げにつなげることです。
単なる設備更新ではなく、「これから企業がどのように成長するのか」という事業展開そのものを支援する補助金と考えるとわかりやすいでしょう。
2026年は3つの「補助対象事業枠」から選択
第1回公募では、事業内容に応じて3つの補助対象事業枠が用意されています。
| 事業枠 | 主な対象事業 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 最大2,500万円 特例適用時 最大3,500万円 |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 最大7,000万円 特例適用時 最大9,000万円 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化 | 最大7,000万円 特例適用時 最大9,000万円 |
実際の補助上限額は従業員数によって異なります。また、表の特例適用時の金額は賃上げ特例の要件を満たした場合の上限額です。
革新的新製品・サービス枠とは?
「革新的新製品・サービス枠」は、自社の技術力等を活用して、新しい価値を提供する製品やサービスを開発する取り組みを支援する枠です。
重要なのは、単なる設備導入や既存の生産工程の改善ではなく、新製品・新サービスの開発を伴うことです。
公式サイトでは、既存製品・サービスの生産等のプロセスを改善・向上させるだけの事業は、この枠の補助対象外とされています。
また、同業の中小企業等ですでに相当程度普及している製品・サービスの開発も対象とはされません。
新しい製品・サービスそのものを生み出したい企業が検討する枠です。
新事業進出枠とは?
「新事業進出枠」は、現在の事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援します。
この枠では、新たに製造・提供する製品やサービスについて、申請企業自身にとって新規性があり、さらに新たな市場を対象としていることがポイントになります。
ここでいう新規性は、必ずしも「日本初」「世界初」である必要はありません。
申請する企業にとって新しい製品・サービスであり、既存事業とは異なる顧客層・市場へ進出することが重要です。
例えば、既存の技術やノウハウを活用しながら、これまで取引していなかった業界や顧客層を対象とした新規事業を立ち上げる場合などに検討できます。
グローバル枠とは?
「グローバル枠」は、新たな海外市場への進出に向けて、国内の製造・輸出体制を強化する取り組みを支援します。
対象となるのは、自社の製品等を活用して、自発的に新しい海外販路を開拓するための国内製造等拠点の強化です。
新たな海外市場とは、既存事業では対象としていなかった国・地域の市場を指します。
また、取引先から依頼されたため設備を増強するといった取引先主導の事業ではなく、自社が主体となって海外市場を開拓する事業であることが求められます。
3つの枠の補助率は?
| 事業枠 | 基本的な補助率 |
|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 中小企業者 1/2 小規模企業・小規模事業者、再生事業者 2/3 |
| 新事業進出枠 | 中小企業者 1/2 |
| グローバル枠 | 中小企業者 2/3 |
革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠では、地域別最低賃金引上げ特例を適用する場合、一定の条件のもとで補助率2/3が適用されます。
自社の企業規模や適用する特例によって条件が変わるため、申請時には第1回公募要領で確認する必要があります。
どんな経費が補助対象になる?
補助対象経費は、選択する事業枠によって異なります。
| 経費 | 対象となる枠 |
|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 3枠 |
| 技術導入費 | 3枠 |
| 知的財産権等関連経費 | 3枠 |
| 外注費・専門家経費 | 3枠 |
| クラウドサービス利用費 | 3枠 |
| 原材料費 | 3枠 |
| 広告宣伝・販売促進費 | 3枠 |
| 建物費 | 新事業進出枠・グローバル枠 |
| 海外旅費・通訳・翻訳費 | グローバル枠 |
特に新事業進出枠とグローバル枠では、建物費も対象経費に含まれている点が特徴です。
一方、海外旅費と通訳・翻訳費についてはグローバル枠のみが対象です。
設備を購入するだけでは対象にならない
この補助金で注意したいのが、「設備を購入したい」というだけでは制度の目的を満たさないことです。
革新的新製品・サービス枠では、新製品・新サービスの開発が必要です。
新事業進出枠では、新しい製品・サービスと新たな市場への進出が必要になります。
グローバル枠では、自社が主体となって新しい海外市場を開拓するための国内体制強化が求められます。
「何を買うか」ではなく、「その投資によってどのような新しい事業を実現するのか」を事業計画として整理することが重要です。
付加価値と賃上げにも要件がある
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、設備投資や新事業の実施だけでなく、その後の企業成長についても要件が設定されています。
| 主な要件 | 内容 |
|---|---|
| 付加価値額 | 年平均成長率4.0%以上 |
| 一人当たり給与支給総額 | 年平均成長率3.5%以上 |
| 事業場内最低賃金 | 地域別最低賃金+30円以上 |
これらは、補助事業終了後3~5年間の事業計画において満たすことが求められます。
特に賃上げ要件と事業場内最低賃金水準については、目標未達の場合に補助金の一部または全部の返還義務が生じる場合があります。
最大9,000万円になる「賃上げ特例」とは?
新事業進出枠とグローバル枠では、通常の補助上限額は最大7,000万円ですが、賃上げ特例を適用すると最大9,000万円まで引き上げられます。
賃上げ特例では、通常の賃上げ要件より高い目標を設定する必要があります。
- 一人当たり給与支給総額を合計で年平均成長率6.0%以上増加
- 事業場内最低賃金を基準値から合計50円以上増加
ただし、特例による上限額拡大だけを見て判断するのは適切ではありません。
補助事業終了後も実際に達成できる賃上げ計画になっているかを、資金計画や収益計画と合わせて検討することが重要です。
第1回公募の申請スケジュール
第1回公募は2026年6月29日に開始されています。
当初予定されていた申請期間は変更され、現在の公式スケジュールでは2026年9月30日から10月30日18:00までとなっています。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2026年6月29日 |
| 申請受付開始 | 2026年9月30日 |
| 応募締切 | 2026年10月30日 18:00 |
申請期間が変更されているため、古い情報を掲載しているWebサイト等には注意が必要です。
どの枠を選ぶ?判断のポイント
| 取り組みたいこと | 検討する枠 |
|---|---|
| 革新的な新製品・新サービスを開発したい | 革新的新製品・サービス枠 |
| 既存事業とは異なる市場へ進出したい | 新事業進出枠 |
| 新しい国・地域へ輸出したい | グローバル枠 |
似ているように見える3つの枠ですが、求められる事業内容は異なります。
特に「製品そのものの革新性を中心に考えるのか」「新しい市場への事業進出なのか」「海外市場開拓なのか」を整理することが、枠を選択する際の重要なポイントです。
申請前に確認したい7つのポイント
- 自社が補助対象者の要件を満たしているか
- 3つのうちどの事業枠に該当するか
- 新製品・新サービスや新市場の要件を満たしているか
- 補助対象経費の条件を満たしているか
- 3~5年間の付加価値向上計画を実現できるか
- 賃上げ・最低賃金の要件を達成できるか
- 申請期限までに必要書類と事業計画を準備できるか
補助上限額が大きい制度だからこそ、設備の見積りだけではなく、市場分析、収益計画、投資回収、賃上げまで一体的に検討することが重要です。
よくある質問
補助上限は本当に9,000万円ですか?
新事業進出枠とグローバル枠では、従業員数101人以上の場合の基本補助上限額が7,000万円、賃上げ特例適用時は9,000万円です。従業員数によって上限額が異なるため、すべての企業に9,000万円の上限が適用されるわけではありません。
建物の費用も対象になりますか?
新事業進出枠とグローバル枠では建物費が補助対象経費に含まれています。革新的新製品・サービス枠では建物費は対象経費として掲載されていません。
設備を入れ替えるだけでも対象になりますか?
単なる設備更新を目的とする制度ではありません。選択する枠に応じて、新製品・新サービス開発、新市場への進出、新しい海外市場開拓等の対象事業要件を満たす必要があります。
海外旅費は補助対象ですか?
グローバル枠では海外旅費、通訳・翻訳費が補助対象経費として設定されています。経費ごとの条件や上限については公募要領を確認する必要があります。
第1回の締切はいつですか?
現在の公式スケジュールでは、申請受付開始が2026年9月30日、応募締切が2026年10月30日18:00です。
まとめ|「設備を買う」ではなく「次の事業をつくる」ための補助金
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、新製品・新サービスの開発、新市場への進出、海外市場開拓という企業の新たな挑戦を支援する制度です。
第1回公募では3つの事業枠が用意され、新事業進出枠とグローバル枠では賃上げ特例適用時に最大9,000万円の補助上限が設定されています。
一方で、付加価値向上や賃上げなど、補助事業終了後を見据えた要件も設定されています。
補助金を使って設備を購入することを目的にするのではなく、「その投資によってどの市場で、どのような新しい価値を生み出し、会社をどう成長させるのか」まで事業計画に落とし込むことが重要です。
新規事業・設備投資に使える補助金を知りたい方へ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、事業内容によって選択する枠や補助上限額、補助率、対象経費が異なります。
「自社の新規事業が対象になるか知りたい」「3つの枠のどれを選べばよいかわからない」「設備投資を含めた事業計画を作りたい」といった場合は、Saluteへご相談ください。
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参考・出典
※本記事は2026年8月26日時点で中小企業庁および独立行政法人中小企業基盤整備機構が公開している「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」第1回公募の公式情報をもとに作成しています。補助対象者、補助対象事業、補助対象経費、補助率、補助上限額、申請要件、スケジュール等は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領・公式情報をご確認ください。