温泉街などに残る大規模な廃旅館を撤去・減築し、新たな宿泊施設として再生する取り組みを「2/3」補助する新制度が始まっています。
観光庁の令和8年度「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」です。
かつて団体旅行向けに建設された大型旅館の中には、事業停止後も大規模な建物が残り、高額な解体費が地域再生の障壁となっているケースがあります。
そこで国は、廃旅館等の撤去・減築にかかる費用を補助率2/3で支援し、その跡地や建物を新たな宿泊施設等として再生する取り組みを後押しします。
公募期間は2026年7月1日から2027年2月26日12時までです。
ただし、申請があった案件から随時審査・採択され、予算上限に達した場合には期限前でも受付終了となる可能性があります。
廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業とは?
本事業は、温泉街などの中心地に残された大規模な廃旅館等を撤去・減築し、新たな宿泊施設等として再生する取り組みを支援する観光庁の制度です。
2026年度から開始された新しい支援事業で、国の令和8年度予算額は10億円です。
背景にあるのは、地方の温泉街などに残る大型廃旅館の問題です。
建物が大きく堅牢であるほど撤去・減築費が高額になり、再生後の宿泊事業には採算性が見込めても、初期の解体費用がボトルネックとなって再開発できないケースがあります。
その「最初の大きな負担」を国が支援し、宿泊施設の再生と地域全体のにぎわい創出につなげる制度です。
補助率は2/3
本事業の大きな特徴が、補助率2/3という高い支援割合です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度名 | 廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業 |
| 令和8年度予算 | 10億円 |
| 補助率 | 2/3 |
| 主な対象 | 地方公共団体、宿泊事業者 |
| 公募開始 | 2026年7月1日 |
| 最終期限 | 2027年2月26日 12:00 |
なお、観光庁の公式資料では事業全体の予算額10億円と補助率2/3が示されていますが、個別事業について一律の補助上限額があるとはここでは記載しません。
実際に申請する際は、最新の公募要領で対象経費や申請条件を確認してください。
何が補助対象になる?
観光庁が示している補助対象事業は、大きく2つです。
| 区分 | 対象 |
|---|---|
| ① 廃旅館等の撤去・減築 | 中心地にある廃旅館等の堅牢な建築物の撤去・減築 |
| ② 関連する周辺整備 | ①と併せて行い、相乗効果を生む取り組み |
単に空き家を解体する一般的な解体補助金とは異なり、宿泊施設の再生や観光地の再生につなげることが重要です。
① 大規模な廃旅館の撤去・減築
中心となる支援は、温泉街等の中心地に残る廃旅館などの堅牢な建築物の撤去・減築です。
例えば、かつて大型団体旅行を受け入れていた大規模旅館が営業を終了し、その建物が長期間残されているケースなどが想定されています。
建物をすべて取り壊す「撤去」だけでなく、建物の規模を縮小する「減築」も対象となる点が特徴です。
「減築して再生」という選択肢
地方の宿泊市場では、団体旅行中心だった時代と現在では求められる施設規模が異なる場合があります。
そのため、巨大な旅館をそのまま再開するのではなく、一部を撤去して規模を縮小し、現在の旅行需要に合った宿泊施設へ再生する方法があります。
「全部壊して建て直す」だけでなく、「必要な規模までダウンスケールして再生する」という考え方が制度に組み込まれています。
再生後は宿泊施設等として活用
廃旅館等の撤去・減築については、撤去して終わりではありません。
観光庁の事業資料では、対象となる廃旅館等について、原則として再生後は宿泊施設等に供されるものとされています。
つまり、地域再生につながる具体的な再利用計画を持つことが重要です。
② 周辺の廃屋撤去等も対象
本事業では、中心となる廃旅館の撤去・減築だけでなく、それと一体的に行う取り組みも支援対象となります。
観光庁は具体例として、旅館等の再生に併せて行う周辺の廃屋撤去・減築等を挙げています。
つまり、一つの旅館だけを再生するのではなく、その周辺も含めて観光地としての魅力を高める事業を検討できます。
周辺施設は観光施設等への活用が必要
廃旅館の再生と併せて行う周辺廃屋等の撤去についても、単なる解体ではありません。
観光庁の資料では、こうした関連事業について、撤去後は観光施設等に供されるものとされています。
宿泊施設を核として、その周辺にも観光客が利用できる機能を整備し、エリア全体の再生につなげることが制度の狙いです。
自治体による「エリア再生計画」が重要
この補助金を検討するうえで非常に重要なのが、地方公共団体との連携です。
観光庁の事業資料では、市町村等による新たな旅館等を含んだエリア再生計画の策定が要件として示されています。
そのため、宿泊事業者だけで独立して建物を解体・再生するというよりも、自治体の地域観光戦略やまちづくりと一体になった事業設計が求められます。
エリア再生計画には何を盛り込む?
観光庁の資料では、計画事項のイメージとして、
- 地域の将来に向けた観光のあり方
- 観光客数などの具体的な目標指標
- 廃屋跡地の利用指針
- 減築後の再生方針
などが示されています。
「この旅館をどうするか」だけではなく、「この地域を今後どうするか」という視点で計画することがポイントです。
対象は地方公共団体・宿泊事業者
観光庁の事業概要では、間接補助の対象として地方公共団体、宿泊事業者が示されています。
特に宿泊事業者が活用する場合は、自治体と早い段階から協議し、地域全体の再生計画との整合性を確認することが重要です。
なぜ国が廃旅館の撤去を支援するのか?
大規模な廃旅館は、地域にとって単なる「使われていない建物」ではありません。
温泉街の中心部に巨大な廃墟が残っていると、周辺の景観や観光地としての印象にも影響します。
一方で、大型かつ堅牢な建物は解体費が高く、民間事業者だけでは再生事業が成立しにくい場合があります。
本制度は、その撤去・減築費を支援することで民間投資を呼び込み、「まちのにぎわい再生」と「地方誘客の促進」につなげることを目的としています。
水上温泉でも廃旅館再生の事例
観光庁の事業資料では、群馬県の水上温泉が廃旅館の撤去・減築による再生イメージとして紹介されています。
かつて団体客向けに建てられた旅館が事業停止となったものの、廃屋の撤去・減築費が巨額であることから、土地の再生が困難となっていたケースです。
このような「再生後の事業性は考えられるが、解体費が重すぎてプロジェクトが進まない」地域を支援することが本制度の狙いです。
申請は先着順ではないが「早め」が重要
公募期間は2027年2月26日までと長く設定されています。
しかし、最終日まで待って申請すればよいとは限りません。
観光庁は、申請があったものから受付締切にかかわらず随時審査・採択を行うとしています。
また、予算上限に達した場合は受付を終了する場合があることも明記されています。
そのため、対象になりそうな事業では自治体との調整や再生計画の検討を早めに進めることが重要です。
公募期限は2027年2月26日12時
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公募開始 | 2026年7月1日 |
| 最終申請期限 | 2027年2月26日(金)12:00 |
| 審査 | 申請があったものから随時実施 |
| 早期終了 | 予算上限到達時は受付終了の場合あり |
2026年9月5日時点で、観光庁の公募情報ページでは「募集中」として掲載されています。
申請は専用Webサイトから
申請は、本事業の特設Webサイトを利用します。
- 特設Webサイトから申請様式をダウンロード
- 事業計画・申請書類を作成
- 特設Webサイトから申請書類を提出
大規模な不動産・宿泊施設再生を伴う制度のため、対象物件、再生後の用途、自治体のエリア再生計画などを事前に整理しておくことが重要です。
こんな地域・事業者は要チェック
- 温泉街の中心部に大型の廃旅館が残っている
- 廃旅館の解体費が高額で再開発が進まない
- 大型旅館を減築して小規模な宿泊施設へ再生したい
- 廃旅館跡地へ新しい宿泊事業を誘致したい自治体
- 宿泊施設と周辺廃屋を一体的に再生したい
- 温泉街の景観・にぎわいを改善したい
- 自治体と民間事業者で観光地再生を進めたい
申請前に整理したい6つのポイント
- 対象となる廃旅館等の所有・権利関係
- 撤去または減築する範囲
- 再生後の宿泊施設等の事業計画
- 周辺廃屋等を含めたエリア全体の再生構想
- 自治体によるエリア再生計画
- 撤去・減築後の施設運営と地域への経済効果
建物の撤去だけではなく、その後の事業化まで一体で設計することが重要です。
よくある質問
補助率はいくらですか?
補助率は2/3です。
廃旅館を壊すだけでも対象ですか?
単純な解体事業ではなく、廃旅館等の撤去・減築後に宿泊施設等として再生する取り組みが制度の中心です。
建物を全部解体しなくても対象になりますか?
はい。撤去だけでなく「減築」も支援対象として明記されています。
周辺の廃屋も対象ですか?
中心となる廃旅館等の再生と併せて行い、相乗効果を生む周辺廃屋の撤去・減築等も対象として示されています。撤去後の用途にも条件があります。
宿泊事業者だけで申請できますか?
補助対象には宿泊事業者が含まれますが、市町村等による新たな旅館等を含むエリア再生計画の策定が要件として示されているため、自治体との連携が重要です。
いつまで申請できますか?
最終期限は2027年2月26日12時です。ただし随時審査・採択が行われ、予算上限に達すると早期終了する場合があります。
まとめ|廃旅館を「負の資産」から地域再生の起点へ
「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」は、大規模な廃旅館等の撤去・減築を支援し、新たな宿泊施設等への再生につなげる2026年度の新制度です。
ポイントは、
- 補助率2/3
- 廃旅館等の撤去・減築を支援
- 周辺廃屋等の一体的な再生も対象
- 自治体によるエリア再生計画が重要
- 2027年2月26日12時まで
- 申請案件から随時審査・採択
です。
「解体費が高すぎるため、事業性があっても再生できない」という温泉街等の課題に直接対応する制度です。
最終期限までは期間がありますが、予算上限に達した場合には早期終了する可能性があるため、活用を検討する場合は早めの準備が重要です。
宿泊施設・観光地再生に使える補助金を知りたい方へ
観光・宿泊分野では、廃旅館の再生だけでなく、省力化、DX、インバウンド対応、施設改修、地域一体の観光地再生など、さまざまな支援制度があります。
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参考・出典
- 観光庁|令和8年度予算「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」
- 観光庁|同事業 事業概要
- 観光庁|令和8年度 公募情報
※本記事は2026年9月5日時点で観光庁が公開している公式情報をもとに作成しています。申請状況や予算執行状況によっては公募期限前に受付が終了する場合があります。対象事業・対象経費・申請要件等については、申請時に必ず最新の公募要領等をご確認ください。