SHIFT事業(脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業)は、中小企業等が工場・事業場のCO₂排出量を削減するために行う設備導入や、DXシステムを活用した運用改善などを支援する環境省の制度です。
「工場のCO₂排出量を削減したい」「化石燃料を使用する設備を電化したい」「排熱を有効活用したい」「設備の運転データを分析してエネルギー使用量を改善したい」と考えている企業にとって、確認しておきたい制度です。
2026年度は、設備導入を支援する「省CO₂型システムへの改修支援事業」と、DXを活用した「DX型CO₂削減対策実行支援事業」などが実施されています。
省CO₂型システムへの改修支援事業は補助率1/3、補助上限はCO₂排出削減量に応じて1億円または5億円。DX型CO₂削減対策実行支援事業は補助率3/4、補助上限200万円です。
この記事では、2026年度の公式情報をもとに、SHIFT事業の仕組み、補助額、CO₂削減要件、対象となる取り組み、申請を検討する際のポイントをわかりやすく解説します。
SHIFT事業とは?
SHIFT事業は、正式名称を「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業」といい、環境省が実施する脱炭素支援制度です。
工場・事業場における先導的なCO₂削減事例を創出し、その知見を広く展開することで、日本の中長期的な温室効果ガス削減目標の達成につなげることを目的としています。
2026年度は、設備そのものを更新・改修する取り組みだけでなく、DXシステムを活用した設備運用の改善なども支援対象となっています。
「脱炭素のための設備投資」と「データを活用した運用改善」の両方を支援していることが、SHIFT事業の特徴です。
2026年度は2つの支援メニューに注目
工場・事業場を運営する企業が確認したい主な支援メニューは、次の2つです。
| 支援事業 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|
| 省CO₂型システムへの改修支援事業 | 1/3 | 1億円または5億円 |
| DX型CO₂削減対策実行支援事業 | 3/4 | 200万円 |
2つの制度は、単に補助金額が異なるだけではありません。
大規模な設備改修によってCO₂排出量を削減するのか、DXによって現在の設備の運転方法などを改善するのかによって、検討する支援メニューが変わります。
最大5億円「省CO₂型システムへの改修支援事業」とは?
省CO₂型システムへの改修支援事業は、中小企業等が電化・燃料転換・熱回収などによってCO₂排出量を大幅に削減する設備導入等を支援します。
補助率は1/3です。
補助上限額はCO₂排出削減量に応じて1億円または5億円となっています。
また、事業期間は3カ年以内とされており、比較的大規模な脱炭素設備投資にも対応しています。
CO₂をどのくらい削減する必要がある?
省CO₂型システムへの改修支援事業では、明確なCO₂削減要件が設定されています。
| 対象 | CO₂削減要件 |
|---|---|
| 工場・事業場単位 | CO₂排出量を15%以上削減 |
| 主要なシステム系統 | CO₂排出量を30%以上削減 |
つまり、「省エネ性能の高い設備に交換する」というだけではなく、設備導入によって一定以上のCO₂削減効果を実現することが求められます。
設備選定の前に、現在のCO₂排出量と設備更新後の削減効果を把握することが重要です。
どんな設備投資が想定されている?
環境省は、省CO₂型システムへの改修支援事業について、CO₂排出量を大幅に削減する次のような取り組みを示しています。
- 設備の電化
- 使用燃料の転換
- 熱回収によるエネルギー利用の効率化
- 既存システムへの設備追加による省CO₂化
- 複数事業者による共同の省CO₂型設備導入
例えば、化石燃料を使用している工程を電化したり、これまで捨てていた排熱を別工程で再利用したりすることで、工場全体のCO₂排出量を削減する取り組みなどが考えられます。
単純な高効率設備への更新は注意
SHIFT事業では、「古い設備を新しい省エネ設備へ交換すれば対象になる」とは限りません。
環境省は、省CO₂型システムへの改修支援事業について、次のシステムに関する単純な高効率化改修は補助対象外としています。
- 蒸気システム
- 空調システム
- 給湯システム
- 工業炉
- CGS(コージェネレーションシステム)
そのため、単純な設備更新なのか、電化・燃料転換・熱回収などを伴うシステム全体の脱炭素化なのかを確認する必要があります。
DXでCO₂を削減する場合は最大200万円
SHIFT事業には、大規模な設備投資とは別に「DX型CO₂削減対策実行支援事業」があります。
この事業では、DXシステムを活用して設備の運転データ等を把握し、設備運用を改善することでCO₂排出量を削減する取り組みなどを支援します。
補助率は3/4、補助上限額は200万円です。
事業期間は2カ年以内とされています。
大規模な設備更新を行う前に、まずデータを取得・分析して、どこにCO₂削減余地があるのかを把握したい企業にも注目したい支援です。
DXを使うと何が変わる?
工場では、設備そのものに問題がなくても、運転方法によって余分なエネルギーを消費している場合があります。
DXシステムを活用して運転データを収集・分析することで、
- 設備ごとのエネルギー使用量を把握する
- 非効率な運転時間帯を発見する
- 設備の運転条件を最適化する
- 改修すべき設備を特定する
- 設備更新によるCO₂削減効果を検討する
といった改善につなげることができます。
SHIFT事業では、このような運転管理データを活用した効果的な改修設計なども支援対象として示されています。
省エネ補助金との違いは?
工場の設備投資では、「省エネ補助金」とSHIFT事業のどちらを検討すればよいのか迷う場合があります。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は、工場・事業場全体の省エネや、先進設備、機械設計を伴う設備、用途に合わせて設計・製造する設備、高い省エネ効果を持つ設備などへの投資を支援する制度です。
一方、SHIFT事業ではCO₂排出削減を中心に、電化・燃料転換・熱回収などによるシステム改修を支援します。
そのため、「エネルギー使用量を減らす投資」なのか、「CO₂排出そのものを大幅に削減するシステム転換なのか」を整理することが、制度を比較する際のポイントになります。
脱炭素投資はコスト削減だけで考えない
工場の脱炭素化では、電気代や燃料費などの削減効果だけで投資を判断しがちです。
しかし現在は、サプライチェーン全体でCO₂排出量を削減する動きも進んでいます。
2026年度には環境省が、代表企業と取引先の中小企業等が連携して省CO₂設備を導入する「Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO₂設備投資促進事業」も実施しています。
今後は、自社単独のエネルギーコストだけではなく、取引先から求められるCO₂削減への対応も設備投資を検討する重要な視点になります。
こんな企業はSHIFT事業を確認したい
- 工場のCO₂排出量を大幅に削減したい
- 化石燃料を使用する設備の電化を検討している
- 燃料転換による脱炭素化を検討している
- 排熱を回収・再利用したい
- 工場全体のエネルギーシステムを見直したい
- DXを活用して設備運転を改善したい
- 設備更新前にCO₂削減余地を把握したい
- 取引先からCO₂排出削減を求められている
申請を検討する前に整理したい6つのポイント
- 現在の工場・事業場のCO₂排出量を把握する
- CO₂を多く排出している設備・工程を特定する
- 電化・燃料転換・熱回収等の方法を検討する
- 設備導入後のCO₂削減率を算定する
- 設備費だけでなく投資効果を整理する
- 利用する支援メニューの最新要件を確認する
SHIFT事業ではCO₂削減率が重要な要件となるため、設備の見積りを取得するだけでなく、現状と導入後の排出量を比較できるように準備することが重要です。
よくある質問
補助上限は本当に5億円ですか?
省CO₂型システムへの改修支援事業では、CO₂排出削減量に応じて補助上限が1億円または5億円とされています。すべての申請者に5億円が適用されるわけではありません。
補助率はいくらですか?
省CO₂型システムへの改修支援事業は1/3、DX型CO₂削減対策実行支援事業は3/4です。
高効率な空調設備への交換だけでも対象ですか?
環境省は、空調システムを含む一定のシステムについて、単純な高効率化改修は省CO₂型システムへの改修支援事業の対象外としています。具体的な設備構成については最新の公募要領を確認する必要があります。
DXだけでも補助制度を利用できますか?
DX型CO₂削減対策実行支援事業が設けられており、DXシステムを用いた設備運用改善や、運転管理データに基づく効果的な改修設計などを支援します。
中小企業以外も対象ですか?
環境省は補助対象を民間事業者・団体としています。各支援メニューで対象者の詳細な要件が設定されているため、申請時には最新の公募要領を確認してください。
まとめ|工場の脱炭素化を「設備+DX」で進める
2026年度SHIFT事業では、工場・事業場のCO₂排出量を大幅に削減する設備投資と、DXを活用した設備運用改善の両方が支援されています。
省CO₂型システムへの改修支援事業では、補助率1/3、CO₂排出削減量に応じて最大5億円の補助上限が設定されています。
一方、DX型CO₂削減対策実行支援事業は補助率3/4、上限200万円で、データを活用した運用改善や改修設計などを支援します。
脱炭素設備を選ぶことから始めるのではなく、「現在どこでCO₂を排出しているのか」を把握し、設備改修とDXのどちらが有効なのかを検討することが重要です。
脱炭素・設備投資に使える補助金を知りたい方へ
脱炭素設備への投資では、SHIFT事業だけでなく、省エネ設備や再生可能エネルギー、DXなど、投資内容によって複数の支援制度を検討できる場合があります。
「自社の設備投資に使える補助金を知りたい」「どの制度を選べばよいかわからない」「脱炭素設備の導入を補助金と合わせて検討したい」といった場合は、Saluteへご相談ください。
Saluteは補助金申請をトータルサポートします。
自社の事業内容や投資計画に適した制度の選定から、事業計画書・申請書類の作成、提出手続きまで、専門家が丁寧にご支援いたします。
参考・出典
※本記事は2026年8月時点で環境省が公開している令和8年度「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO₂化加速事業(SHIFT事業)」の公式情報をもとに作成しています。補助対象者、対象設備、補助率、補助上限額、CO₂削減要件、公募期間等は支援メニューや公募回によって異なる場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領・公式情報をご確認ください。