人材開発支援助成金は、企業が従業員に対して職務に関連する専門的な知識や技能を習得するための職業訓練等を計画的に実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。
「社員に新しい技術を習得してもらいたい」「DXを進めるためにデジタル人材を育成したい」「AIなど新しい分野のスキルを学ばせたい」と考えている企業にとって、確認しておきたい助成制度の一つです。
2026年度(令和8年度)は、人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど、目的に応じた7つのコースが設けられています。
この記事では、2026年8月時点で厚生労働省が公開している公式情報をもとに、人材開発支援助成金の仕組み、対象となる訓練、各コースの違い、申請前に確認しておきたいポイントをわかりやすく解説します。
人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金は、企業等による従業員の人材育成やスキルアップを支援する厚生労働省の制度です。
事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合などに、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されます。
設備を購入するための補助制度ではなく、「人材への投資」を支援する制度であることが大きな特徴です。
2026年度は7つのコースがある
2026年度の人材開発支援助成金には、企業の人材育成の目的に応じて7つのコースがあります。
| コース | 主な目的 |
|---|---|
| 人材育成支援コース | 職務に関連する知識・技能を習得するための訓練等を支援 |
| 教育訓練休暇等付与コース | 従業員が教育訓練を受けるための休暇制度等を導入する企業を支援 |
| 人への投資促進コース | デジタル人材・高度人材の育成など、人への投資を促進する訓練を支援 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業や事業展開、DX・GX等に伴って必要となる新たな知識・技能の習得を支援 |
| 建設労働者認定訓練コース | 建設労働者に対する認定職業訓練を支援 |
| 建設労働者技能実習コース | 建設労働者の技能向上のための技能実習を支援 |
| 障害者職業能力開発コース | 障害者の職業能力開発訓練を継続的に実施するための施設等を支援 |
同じ社員研修でも、研修内容や目的によって利用を検討するコースが異なります。
DX・AIの人材育成にも活用できる?
DXやAIの導入を進める企業では、システムやAIツールを導入するだけでなく、それを活用できる人材の育成が課題になることがあります。
人材開発支援助成金には、デジタル人材や高度人材の育成などを支援する「人への投資促進コース」や、DX・GX、事業展開等に伴うリスキリングを支援する「事業展開等リスキリング支援コース」があります。
そのため、研修内容や各コースの要件を満たす場合には、デジタル分野の人材育成についても活用を検討できます。
「AIツールを導入するための助成金」ではなく、「業務に必要なAI・デジタルスキル等を従業員が習得するための訓練を支援する制度」と考えるとわかりやすいでしょう。
人材育成支援コースとは?
幅広い企業が確認しておきたいのが「人材育成支援コース」です。
2026年度の人材育成支援コースでは、雇用する被保険者に対して、職務に関連する知識・技能を習得させるための訓練等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
また、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練や、非正規雇用労働者を対象として正社員化を目指す訓練なども制度上設けられています。
一般的な職務能力向上を目的とした社員教育を考えている場合には、最初に確認したいコースの一つです。
「人への投資促進コース」はどんな制度?
人への投資促進コースは、企業による積極的な人材投資を支援するコースです。
高度デジタル人材等の育成、情報技術分野の訓練、定額制の研修サービス、自発的な職業能力開発など、複数の訓練メニューが設けられています。
2026年度には制度改正も行われ、新規採用助成・職務代行助成が追加されています。
人材採用と教育を組み合わせて新たな専門人材を育成したい企業は、最新の制度内容を確認しておきましょう。
事業展開等リスキリング支援コースとは?
新しい事業への進出やDX・GXなど、企業の事業環境が変化すると、これまで社内になかった知識や技能が必要になる場合があります。
こうした新たな分野に対応するための人材育成を支援するのが「事業展開等リスキリング支援コース」です。
例えば、
- 新規事業を始めるために必要な専門知識を習得する
- DX推進に必要なデジタルスキルを習得する
- 事業のデジタル化に対応できる人材を育成する
- GXに対応するための新たな知識・技能を習得する
といった人材育成を検討する際に確認したいコースです。
2026年度には、このコースに設備投資加算が新設されています。
eラーニングや定額制研修も対象になる?
人材開発支援助成金では、コースや訓練の要件を満たす場合、eラーニングや通信制訓練、定額制サービスによる訓練も制度上想定されています。
そのため、従業員がオンラインで受講する研修についても、内容や実施方法等によっては助成対象となる可能性があります。
ただし、単にオンラインサービスを契約すれば対象になるわけではありません。
対象となる訓練の要件、受講状況の確認方法、必要な提出書類などを事前に確認する必要があります。
2026年度は申請書類にも変更がある
人材開発支援助成金は、2026年度にも複数の制度改正が行われています。
厚生労働省によると、2026年5月14日から、人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースについて、支給申請時に「受講料等の価格設定に関する疎明書」の提出が必要となる制度改正が行われました。
また、2026年8月3日以降の支給申請では、一部のeラーニングに関する報告書について改正後の様式を使用する必要があります。
以前に制度を利用したことがある企業でも、過去の様式や手続きのまま申請せず、最新の申請書類を確認することが重要です。
研修を始めてから申請すればいい?
人材開発支援助成金を利用する場合、研修を実施した後になってから制度を探すのではなく、訓練開始前に申請手続きを確認することが重要です。
コースによっては、訓練開始前に職業訓練実施計画届等の提出が必要です。
また、認定実習併用職業訓練や情報技術分野認定実習併用職業訓練では、人材開発支援助成金の手続きの前に、実践型人材養成システムに関する厚生労働大臣の認定手続きが必要になります。
「研修を申し込んでから助成金を調べる」のではなく、「研修を計画した時点で利用できる助成金を確認する」ことが重要です。
こんな企業は人材開発支援助成金を確認したい
- 従業員向けの社員研修を予定している
- DXを推進できる人材を社内で育成したい
- AIやデジタル技術について従業員に学ばせたい
- 新規事業に必要な知識・技能を習得させたい
- 従業員のリスキリングを進めたい
- eラーニングや定額制研修サービスを活用したい
- 非正規雇用労働者の能力向上や正社員化を進めたい
- 教育にかかる企業負担を軽減したい
人手不足の中で新たな専門人材を外部から採用するだけでなく、現在働いている従業員を育成するという選択肢を考える企業にとって、確認する価値のある制度です。
申請前に確認したい7つのポイント
- 自社が助成対象となる事業主の要件を満たしているか
- 受講する従業員が対象者の要件を満たしているか
- 研修内容が職務に関連したものか
- どのコース・訓練メニューに該当するか
- 訓練開始前に必要な手続きを確認したか
- 受講料や訓練時間などの証拠書類を残せるか
- 最新の申請様式・支給要領を確認しているか
特に人材開発支援助成金はコースごとに対象者、訓練、助成内容、手続きが異なるため、「研修内容を決めてから申請方法を確認する」のではなく、研修計画の段階から制度を確認することが重要です。
よくある質問
AI研修ならすべて助成対象になりますか?
いいえ。「AI研修」という名称だけで助成対象になるわけではありません。利用するコースの対象者、訓練内容、訓練時間、実施方法など、所定の要件を満たす必要があります。
オンライン研修も対象になりますか?
コースや要件によって、eラーニングや通信制訓練等も対象となる場合があります。対象となる訓練の要件や必要書類を事前に確認してください。
研修費用の全額が助成されますか?
いいえ。助成率や助成額はコース、企業規模、訓練内容等によって異なります。対象となる経費についても条件があります。
社員が自主的に受講する研修にも使えますか?
人への投資促進コースには、自発的職業能力開発に関する制度があります。ただし、利用には所定の要件があるため、最新のパンフレット・支給要領を確認してください。
研修を開始してから申請できますか?
コースによって訓練開始前の計画届等が必要です。研修を契約・開始する前の段階で、利用するコースの手続きと提出期限を確認してください。
まとめ|AI・DX時代は「設備」だけでなく「人」への投資も重要
人材開発支援助成金は、企業が従業員に職務に関連する専門的な知識や技能を習得させるための訓練等を行う場合に活用を検討できる制度です。
2026年度は7つのコースがあり、一般的な職業訓練だけでなく、人への投資、DX・GXや事業展開に対応するためのリスキリングなど、企業の目的に応じた支援が用意されています。
AIやDXを進める場合も、システムを導入するだけでは十分ではありません。新しい技術を実際の業務で活用できる人材を育成することが重要です。
設備投資に使える補助金と、人材育成に使える助成金をそれぞれ確認し、「設備+人材」の両面から生産性向上を考えていきましょう。
自社で使える補助金・助成金を知りたい方へ
国や自治体には、設備投資だけでなく、DX、人材育成、賃上げ、新規事業など、企業のさまざまな取り組みを支援する制度があります。
「自社で使える制度を知りたい」「設備投資と社員教育を同時に進めたい」「どの補助金・助成金を選べばよいかわからない」といった場合は、Saluteへご相談ください。
Saluteは補助金申請をトータルサポートします。
自社の事業内容や投資計画に適した制度の選定から、事業計画書・申請書類の作成、提出手続きまで、専門家が丁寧にご支援いたします。
参考・出典
※本記事は2026年8月24日時点で厚生労働省が公開している令和8年度人材開発支援助成金の公式情報をもとに作成しています。対象事業主、対象労働者、対象訓練、助成率、助成額、申請方法、提出期限等はコースや訓練内容によって異なり、制度改正が行われる場合があります。申請の際は必ず厚生労働省が公開する最新のパンフレット・支給要領・申請様式等をご確認ください。