INPIT外国出願補助金は、中小企業、スタートアップ、大学等が外国で特許・実用新案・意匠・商標の権利取得を目指す際に、外国出願などに必要となる経費の一部を支援する制度です。
「自社技術を海外でも特許で守りたい」「海外展開する前にブランド名を商標登録したい」「外国出願の翻訳費や代理人費用が高い」といった企業にとって、確認しておきたい補助金です。
日本で取得した特許権や商標権が、そのまま外国でも有効になるわけではありません。海外市場で自社の技術やブランドを守るためには、進出する国・地域を考えながら知的財産権の取得を検討する必要があります。
この記事では、2026年8月時点で特許庁・INPITが公開している公式情報をもとに、外国出願補助金の補助率、対象経費、申請要件、2026年度の公募スケジュールと、海外展開前に知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
INPIT外国出願補助金とは?
INPIT外国出願補助金は、中小企業、スタートアップ、大学等による外国での知的財産権の取得を支援する制度です。
外国で発明やブランドなどを権利化する際には、外国特許庁へ支払う費用だけでなく、国内・現地代理人への費用や翻訳費など、さまざまな費用が発生します。
このような外国での権利取得に必要となる費用の一部を補助することで、企業等の国際的な知的財産戦略を支援することが制度の目的です。
なぜ海外進出には外国出願が必要?
特許や商標などの知的財産権は、基本的に権利を取得した国・地域で効力を持つものです。
そのため、日本で自社製品について特許を取得していても、それだけで外国において同じ特許権を主張できるわけではありません。
商標についても同様で、日本で使用しているブランド名を外国で使用・保護したい場合には、進出先での権利取得を検討する必要があります。
海外進出を検討する際は、「どの国で商品を売るか」と同時に、「どの国で知的財産を守る必要があるか」を考えることが重要です。
特許・実用新案・意匠・商標が対象
外国出願補助金では、複数の知的財産権について外国での権利取得を支援しています。
| 知的財産権 | 主に保護するもの |
|---|---|
| 特許 | 新しい技術・発明 |
| 実用新案 | 物品の形状・構造等に関する考案 |
| 意匠 | 製品などのデザイン |
| 商標 | 商品・サービスの名称やブランド等 |
自社が海外で何を守りたいのかによって、取得を検討する知的財産権は異なります。
補助率は1/2
INPIT外国出願補助金では、対象となる外国出願等の経費について1/2が補助されます。
外国で知的財産権を取得する場合、複数国への出願や翻訳、現地代理人への依頼などによって費用が大きくなることがあります。
こうした費用の一部を補助することで、中小企業やスタートアップ等の海外での権利取得を支援します。
ただし、すべての外国出願費用が自動的に補助されるわけではありません。補助対象となる手続きや経費、実施時期などには要件があります。
どんな費用が補助対象になる?
外国出願では、出願そのものの手数料以外にもさまざまな費用が発生します。
主な補助対象経費として、次のような費用があります。
| 経費 | 内容 |
|---|---|
| 外国特許庁への費用 | 外国への出願手続等に必要となる所定の費用 |
| 国内代理人費用 | 外国出願手続きを依頼する国内代理人への費用 |
| 現地代理人費用 | 出願国・地域の代理人に支払う費用 |
| 翻訳費 | 外国出願に必要となる書類等の翻訳費用 |
実際に補助対象となる範囲については、公募要領や交付要綱で確認する必要があります。
「これから日本で特許を出す」だけでは対象にならない
外国出願補助金を検討するときに特に注意したいのが、国内出願との関係です。
地域実施機関を通じた海外出願支援事業では、原則として応募時点ですでに日本国特許庁へ特許、実用新案、意匠または商標を出願していることなどの要件があります。
採択後、その出願を基礎として外国出願を行うことなどが求められます。
PCT国際出願やハーグ協定に基づく意匠の国際出願などについても、それぞれ要件が設定されています。
海外展開が決まってから知財について考えるのではなく、国内での出願段階から海外展開を想定した知財戦略を検討することが重要です。
海外で権利を取得する目的も重要
外国出願補助金は、単に外国で特許や商標を取得することだけを目的とした制度ではありません。
外国で権利が成立した場合に、その権利を活用した事業展開を計画していることなどが重要になります。
例えば、
- 海外で自社製品を販売する
- 海外企業へ技術をライセンスする
- 海外メーカーと事業提携する
- 海外で自社ブランドの商品を販売する
- 模倣品や商標の先取りに備える
といった海外事業との関係を整理しておく必要があります。
商標は海外展開前に確認したい
海外進出では、技術だけでなくブランドの保護も重要です。
特許庁は、海外で現地企業等によって日本企業のブランド名などが先に商標出願される「冒認出願」への対策についても支援制度を設けています。
海外で商品を販売し始めてから商標を確認すると、自社が日本で使用してきたブランド名をその国で使用する際に問題が発生する可能性があります。
商品の輸出や海外店舗の展開を計画している場合は、販売開始前の段階で進出国の商標調査・出願を検討することが重要です。
2026年度第4回公募は9月7日から
INPITが公表している2026年度の外国出願補助金では、年間を通じて複数回の公募が行われています。
2026年8月24日時点では、第3回公募まで受付を終了しており、次回となる第4回公募は2026年9月7日から9月28日までの予定です。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 第3回公募 | 2026年6月8日~6月29日(終了) |
| 第4回公募 | 2026年9月7日~9月28日予定 |
| 中間手続補助 | 2026年4月1日~12月14日 |
公募開始直前から準備するのではなく、外国出願する国・地域、対象となる知的財産、出願費用などを事前に整理しておくことが重要です。
申請にはGビズIDプライムが必要
INPIT外国出願補助金の申請は、デジタル庁が提供する電子申請システム「Jグランツ」を利用して行います。
Jグランツから申請するためには、GビズIDプライムアカウントが必要です。
アカウントを保有していない場合は、補助金の申請準備と並行してGビズIDの取得手続きについても確認しておく必要があります。
海外出願前に整理したい6つのポイント
- どの技術・ブランド・デザインを守るのか
- どの国・地域で権利を取得する必要があるのか
- 国内出願との関係を確認する
- 外国で権利化できる可能性を検討する
- 外国出願・翻訳・代理人等の費用を整理する
- 権利取得後にどのような海外事業へ活用するのかを整理する
すべての国へ出願すればよいわけではありません。
「販売する国」「製造する国」「競合企業が存在する国」など、自社の海外事業戦略と知財戦略を関連付けて出願先を検討することが重要です。
海外で模倣品が見つかった場合にも支援制度がある
海外知財に関する支援は、外国出願だけではありません。
特許庁では、海外で取得した特許・商標等が侵害されている中小企業等に対して、模倣品の製造元や流通経路等を把握するための侵害調査などを支援する「海外侵害対策支援事業」も実施しています。
また、海外で自社ブランドの商標を第三者に先取りされた場合の対応や、外国企業から知的財産権侵害を理由に警告・訴訟を受けた場合などを支援する制度もあります。
海外展開では、「権利を取得する」だけでなく、「取得した権利をどう守るか」まで考えることが重要です。
よくある質問
海外で特許を取得する費用は補助されますか?
INPIT外国出願補助金では、要件を満たす外国特許出願等に必要な費用の一部が補助されます。外国特許庁への費用、代理人費用、翻訳費用などが対象となる場合があります。
海外商標も対象になりますか?
はい。商標も支援対象となっています。ただし、申請や外国出願の内容について所定の要件を満たす必要があります。
PCT国際出願も対象ですか?
PCT国際出願についても対象となる場合があります。国内出願との関係などについて要件が設定されているため、公募要領を確認してください。
外国出願してから補助金を申請できますか?
補助対象となる手続きの実施時期にはルールがあります。外国出願を先に進めるのではなく、出願前に利用する制度の公募要領を確認してください。
どの国に出願するべきですか?
自社の販売先、製造拠点、競合企業、市場規模などによって判断は異なります。海外事業計画と知財戦略をあわせて検討することが重要です。
まとめ|海外展開と知財戦略は同時に考える
INPIT外国出願補助金は、中小企業やスタートアップ等が海外で特許・実用新案・意匠・商標の権利取得を進める際に活用を検討できる制度です。
外国出願には、外国特許庁への費用だけでなく、翻訳費や国内・現地代理人費用なども発生するため、複数国へ展開する場合には大きな負担になることがあります。
一方、海外で事業を展開する場合、日本で取得した知的財産権だけでは十分に自社の技術やブランドを守れない可能性があります。
海外展開を計画する段階から、「市場」「販路」「知的財産」を一体として考え、必要な外国出願に支援制度を活用することが重要です。
海外展開に活用できる補助金を知りたい方へ
「海外進出に使える補助金を知りたい」「外国特許・商標の取得を検討している」「海外展開と設備投資を同時に進めたい」といった場合は、出願や契約を進める前に利用可能な支援制度を確認することが重要です。
Saluteは補助金申請をトータルサポートします。
自社の事業内容や海外展開計画に適した補助制度の選定から、事業計画書・申請書類の作成、提出手続きまで、専門家が丁寧にご支援いたします。
参考・出典
※本記事は2026年8月24日時点で公開されている特許庁・INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)の公式情報をもとに作成しています。補助対象者、補助対象経費、補助率、公募期間、申請要件等は変更される場合があります。申請の際は必ず最新の公募要領・交付要綱・公式情報をご確認ください。